土状黒鉛とは

天然黒鉛のうち土状黒鉛は、基本的に、石炭層が火成岩の貫入や造山運動による熱や圧力で変性を受けて生じたものです。このため、多くは、堆積岩や大理石や片岩、片麻岩などの変成岩に含まれています。もっとも、単純に石炭がその場で変化したと言うよりは、石炭が一酸化炭素や二酸化炭素などに酸化されて揮発した後、地層中で熱分解されて炭素を析出し黒鉛を生じるプロセスもあります。同様に、マグマに含まれるガスが熱分解して無機的に、つまり、有機物とは関係なく天然黒鉛を生じることもあります。実際、天然黒鉛は隕石中にも含まれることがあります。
日本にもかつては黒鉛鉱山がありましたが、現在、採掘を行っている黒鉛鉱山は日本にはありません。
なお、木材を無酸素下に加熱してつくる木炭や油などを燃やしてできるや煤(すす)も微細な黒鉛を含んでいることがありますが、黒鉛のようにグラフェンシートが層をなして広がりを持った結晶だけでなく、小さなグラフェンシートの欠片や不完全な球状グラフェンシートなども含んでいます。

土状黒鉛はどのような黒鉛か?

天然黒鉛の分類はメーカーにもよりますが、基本的には土状黒鉛と鱗状黒鉛に分類されます。
土状黒鉛は、天然黒鉛のうち、文字通り、土状または土塊状の外観を有する黒鉛です。鈍い金属光沢があり、見た目では無煙炭と区別が付かないこともあります。天然黒鉛の鉱山では採掘後、脈石を除去して土状黒鉛を採り出しています。
鱗状黒鉛は鱗状の天然黒鉛です(詳細は「鱗状黒鉛」の項目を参照してください)。
土状黒鉛は、基本的には炭層が変性を受けて生じたものです。土状黒鉛は結晶性が少ないのが特徴です。このため微粉化が比較的容易です。その反面、浮遊選鉱が困難です。
浮遊選鉱とは、鉱石を砕いて界面活性剤や油脂を混ぜた水と混ぜ、攪拌機中で空気を吹き込むものです。親油性のある物質は油脂の泡にまとわりついて浮上し、その他の成分は沈降します。文字通り鱗状の鱗状黒鉛はこの浮遊選鉱での精製に適していますが、土状黒鉛は水分とのなじみがよく浮遊選鉱ではあまり精製が進みません。
輸入される土状黒鉛はおおむね炭素分80%以上のもので、精製が必要な場合は浮遊選鉱を繰り返して炭素分以外の不純物を除きますが、精製歩留まりが悪いので、多くの場合は低純度のまま使用されます。土状黒鉛の粒子は平均で数μm~数十μmです。
土状黒鉛には十数%程度の不純物が含まれますが、これは岩石鉱物を形成するケイ酸塩、アルミ含有鉱物などの固形分、揮発成分、水分などです。

土状黒鉛の用途

土状黒鉛は、製鋼、ゴム、塗料、電気材料、固体潤滑剤、耐火物、鉛筆などで使用されます。
製鋼では、例えば、熱間圧延で鋼材を製造する場合があります。これは金属を加熱して成形する加工ですが、黒鉛は高温でも潤滑性を維持し、土状黒鉛は水分散性も良いので好都合です。
ゴムに添加する目的は充填材、補強材、熱伝導性の向上などです。樹脂にも添加されます。
塗料に添加する目的は電気伝導性、熱伝導性の向上などです。
電気材料としてよく用いられるのは、電気用ペースト、乾電池内容物などで日常的に用いられています。
製鋼以外でも、不純物が影響しない限り、土状黒鉛は固体潤滑剤として種々使用されます。
また、溶鉱炉用のカーボンブロックの成分など、耐火物にも使用されます。
さらに、鉛筆にも使用されます。
潤滑性や導電性などは鱗状黒鉛の方が優れていますが、微粉として安価であるため、不純物が影響しない分野では土状黒鉛の利用価値は極めて幅広いものです。